夕食は梅田で食べた。
万博会場から夢洲駅に乗って、中央線で本町まで行き、御堂筋線に乗り換えて梅田まで。新大阪の新幹線の時間まで2時間あった。
「大阪来たんやから大阪っぽいもの食べたい」と彩が言った。
「たこ焼きは会場で食べた」
「串カツも食べた」
「じゃあ炒飯は?」
阪急の地下街をぐるりと回って、大阪王将のれん街の店に入った。「黒毛和牛焼肉炒飯」を二人とも頼んだ。2,500円。
「高いな」と悠が言った。
「万博来た日の晩ごはんやし」と彩が言った。
炒飯が来た。和牛の脂が米粒ひとつひとつに絡んでいた。一口食べて、二人とも黙った。
「うまい」と悠が先に言った。
「うまい」と彩も言った。
新幹線の中で、二人でスマートフォンの写真を見返した。
「何枚あった?」と彩が聞いた。
悠がアルバムを開いた。「187枚」
「一日で?」
「一日で」
彩が自分のスマートフォンも開いた。「私も数えてみる。……206枚あった。重複してるやつもあるけど」
二人合わせると、ほぼ400枚になる計算だった。
「フランス館のドレスの部屋が一番多かった」と彩が言った。
「50枚くらいあった」
「撮ってもらえてよかった」
「あの部屋、他の人もみんな撮ってた」
「それはそう。でも撮りたいじゃん、やっぱり」
悠は窓の外を見た。夜の東海道が流れていた。名古屋を過ぎ、豊橋を過ぎ、浜名湖の夜景が車窓に映った。
品川を過ぎたあたりで、彩がスマートフォンをしまった。
「また来る?」と悠が聞いた。
「来る」と彩が言った。即答だった。「次はイタリア館。ちゃんと整理券取れるか調べてから行く」
「10月の閉会前にもう一回入れるかな」
「10月中旬まで開いてるから、9月に行けば間に合うんじゃないかな。でも混むんだろうな」
「混むだろうな」
「まあいいか」と彩は言った。「今日行けてよかったから」
悠はそうだな、と思った。
フランス館のあの白い部屋で、彩が少しだけ動けなくなっていたこと。ポルトガルのエッグタルトを食べながら「卵の値段が高くなってもこれはちゃんとした卵だ」と言ったこと。ガンダムの前で二人で顔を見合わせて何も言わなかったこと。
東京駅のホームに着いた。
「お疲れ」と彩が言った。
「お疲れ」と悠も言った。
スマートフォンに187枚と206枚の写真が残った。夢洲の一日が、そこにあった。